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ベアフットシューズとゼロドロップシューズの違い

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takumingo · · 5分で読める

「ベアフットシューズとゼロドロップシューズって同じもの?」

ベアフットに興味を持ち始めた人がほぼ確実にぶつかる疑問ですよね。ショップのスタッフでも曖昧な説明をすることがありますし、メーカーのサイトでも混同されているケースがあります。

結論から言うと、同じではありません。 重なる部分はありますが、指しているものが違います。そしてこの違いを理解していないと、靴選びで具体的に失敗します。

この記事では、それぞれの定義を整理して、具体的なシューズ名とソール厚の数字で「何が同じで何が違うのか」を明確にしていきます。

ゼロドロップシューズとは

かかと(ヒール)と前足部(フォアフット)の高さの差が0mmの靴です。

一般的なランニングシューズは、かかとの部分がつま先側より8〜12mm高くなっています。この高低差を「ドロップ」と呼びます。ゼロドロップシューズはこの差をゼロにして、素足で立っている時と同じ足の角度を再現しています。

ここで大事なのは、ゼロドロップが定義しているのは高さの「差」だけだということ。ソールの厚さそのものは問いません。かかとに30mm、つま先にも30mmのクッションが入っていても、差がゼロならゼロドロップシューズですよね。

「ゼロドロップ」というコンセプトをランニングシューズの設計に持ち込んだのは、2011年創業のAltra(アルトラ)です。共同創業者のゴールデン・ハーパーは、市民ランナーが高ドロップのシューズでかかと着地を続けた結果、膝の故障を繰り返している問題に着目しました。ドロップをゼロにして自然なフォームへの矯正をシューズ側からアプローチする。これがAltraの出発点であり、ゼロドロップブームの起点です。

ベアフットシューズとは

素足に近い感覚を再現することを目指した靴です。

「ゼロドロップ」が形状の条件(高低差ゼロ)だけを定義するのに対して、ベアフットシューズは体験の思想を定義しています。素足に近い感覚を実現するために、複数の条件を複合的に満たすんですね。

薄いソール(3〜10mm、地面の凹凸が伝わる)、柔らかい構造(手で丸められるほど柔軟)、ワイドトゥボックス(足指が自然に広がる)、軽量(クッション材やサポート構造がない)。そして多くの場合ゼロドロップです。

つまり、ベアフットシューズは「ゼロドロップであること」を含みつつも、それだけでは足りない、もっと広い概念ということになります。Vivobarefootの公式サイトでも、ベアフットシューズの条件として「薄いソール」「柔軟性」「軽量」「ワイドトゥボックス」「ゼロドロップ」を挙げています。ゼロドロップはベアフットの条件のひとつに過ぎません。

ミニマリストシューズという第3の用語

話をややこしくしているのが「ミニマリストシューズ」という用語です。

ミニマリストシューズは、従来の靴より機能を削ぎ落としたシューズの総称で、ベアフットシューズよりもやや広い概念ですね。Vivobarefoot公式の説明では、ミニマリストシューズは4〜7mm程度のドロップがあることもあるとされています。厳密なベアフットシューズ(ゼロドロップ、超薄底)と、普通のランニングシューズの中間に位置する感じです。

3つの関係を整理するとこうなります。

普通のランニングシューズ ← ミニマリストシューズ ← ベアフットシューズ(素足に近い順に右へ)

そしてゼロドロップは「高低差の条件」であり、この直線の上にも下にも横断的に存在します。ゼロドロップかつ厚底(Altraのメイン機種)もあれば、ゼロドロップかつ薄底(Vivobarefoot)もある。

2つの関係を整理する

言葉だけだと混乱するので、集合関係を明確にしておきます。

ベアフットシューズは、ほぼ確実にゼロドロップです。素足に近い感覚を目指す以上、かかとが持ち上がっていたら素足感覚にはなりません。だからベアフットシューズの大半はゼロドロップを採用しています。

でも、ゼロドロップシューズがベアフットシューズとは限りません。 ゼロドロップでも、ソールが25〜33mmあってクッションたっぷりで、地面の感触が全く伝わらない靴はたくさんあります。「フラットだけど保護が厚い靴」であって、「素足感覚の靴」ではないんですよね。

集合関係で書くなら、ベアフット ⊂ ゼロドロップ(ベアフットはゼロドロップの部分集合)に近い。ベアフットシューズはゼロドロップの世界の中の一部です。

具体シューズで比較する

抽象的な定義よりも、実際のシューズとソール厚の数字で見たほうが早いです。

Altra ローンピーク 8:ゼロドロップだけどベアフットではない

Altraの看板トレイルシューズです。ドロップ:0mm。スタックハイト(ソール厚):25mm。トゥボックス:FootShape™で広い。

ゼロドロップでトゥボックスも広いですが、25mmのクッションが足裏と地面の間にあります。地面の凹凸はほぼ伝わりませんし、ソールも手で丸められるような柔軟性はありません。設計思想は「自然な足の角度を保ちながら、衝撃はしっかり吸収する」。素足感覚とは別のアプローチです。

Vivobarefoot Primus Lite IV:ベアフットシューズ

ソール厚:約6mm。ドロップ:0mm。トゥボックス:足型に沿った広い設計。重量:約150g。

手で簡単に曲がりますし、丸められます。地面の凹凸がはっきりと足裏に伝わって、小石を踏んだら小石の形がわかる。「素足に薄い膜を被せた」に近い体験ですね。ベアフットシューズの代表例です。

Merrell ベイパーグローブ 6:ベアフットシューズ

ソール厚:約6mm(Vibramアウトソールのみ、ミッドソールなし)。ドロップ:0mm。

構造はVivoに似ています。Vibramソールのグリップ力が高くて、ジムや軽めのトレイルで人気です。クッション性はほぼゼロ。地面の情報がダイレクトに伝わってきます。

Altra Experience Wild 3+:ゼロドロップですらない(4mmドロップ)

2026年2月発売のAltra最新モデルです。ドロップ:4mm。スタックハイト:32mm/28mm。Vibram Megagripアウトソール。

ゼロドロップの先駆者であるAltraが、ゼロドロップではないシューズを本格展開しています。もちろんベアフットでもありません。このシューズの存在が、「ゼロドロップ」と「ベアフット」が別物であることを一番わかりやすく示していますね。

数字で並べてみる

シューズドロップソール厚ベアフット?Vivobarefoot Primus Lite IV0mm約6mm○Merrell ベイパーグローブ 60mm約6mm○Xero Shoes HFS II0mm約5.5mm○Altra ローンピーク 80mm25mm×Altra Olympus 70mm33mm×Altra Experience Wild 3+4mm32mm×一般的なランニングシューズ8〜12mm25〜35mm×厚底カーボンシューズ8〜10mm35〜40mm+×

ソール厚6mmと25mmでは、体験がまるで違います。同じ「ゼロドロップ」でも、Vivo Primus LiteとAltra ローンピークは別世界の靴ですね。

この違いを知らないと起きること

「ベアフットが欲しい」のにゼロドロップ厚底を買ってしまう

「ベアフットシューズが気になる」と思ってAltraのトーリンを買う。ゼロドロップでトゥボックスは広いから足指は楽ですが、厚いクッションで足裏の感覚はほぼゼロです。「ベアフットってこんなもんか」と思ったら、実はベアフットではなかった、というパターンですね。

「ゼロドロップで楽に走りたい」のにベアフットを買ってしまう

「ゼロドロップが膝に良いらしい」と聞いてVivobarefootを買ったら、ソールが6mmしかなくてふくらはぎが悲鳴を上げてしまう。求めていたのは「フラットな角度で楽に走ること」だったのに、修行になってしまっては本末転倒です。

移行のステップを飛ばしてしまう

普通のランニングシューズ(ドロップ10mm、ソール30mm)からいきなりベアフットシューズ(ドロップ0mm、ソール6mm)に飛ぶと、足・ふくらはぎ・アキレス腱への負荷が一気に変わって、怪我のリスクが跳ね上がります。

安全な移行ルートは、普通の靴 → ゼロドロップ厚底(Altraなど) → ベアフットシューズ。まず「フラットな足の角度」に体を慣らして、そこから「ソールの厚みを減らす」という二段階を踏むのがおすすめです。この移行ステップを理解するには、ゼロドロップとベアフットが別のカテゴリだと知っておく必要があります。

Altraが「ゼロドロップの入口」を広げている

最後に、ゼロドロップの世界で今起きている動きについて触れておきます。

ゼロドロップを世に広めたAltraが、2023年に初の4mmドロップシューズ「AltraFWD Experience」を発売しました。共同創業者のブライアン・ベクステッドは「12年間ずっと聞いてきた。“いいコンセプトだけど、ゼロドロップは無理”と」と語っています。ただし同時に、「TorinやLone Peakを4mmにすることは絶対にない」 とも明言していて、ゼロドロップのコアラインはそのまま維持されています。

2026年2月には、Experience 3コレクションとしてロード2モデル(Flow 3、Flow ST)とトレイル2モデル(Wild 3、Wild 3+)を追加発売しました。全モデル4mmドロップ。「いきなりゼロは怖い」という人が、まず4mmで足を慣らして、その先でゼロドロップのコアラインに移行していける。そういう入口として設計されたラインですね。

つまりAltraがやっているのは「ゼロドロップをやめた」ではなく、「ゼロドロップにたどり着くまでのステップを用意した」ということです。これは先ほどの移行ルートの話(普通の靴→ゼロドロップ厚底→ベアフット)とも重なりますよね。

ベアフットシューズの世界とは直接重ならない話ですが、「ゼロドロップ」と「ベアフット」が別のカテゴリだからこそ、こういう段階的なアプローチが成り立つ、というのはこの記事のポイントを裏付けている部分だと思います。

まとめ

ゼロドロップシューズ は、かかとの高さ差がゼロの靴。ソールの厚さは問いません。 ベアフットシューズ は、素足に近い体験を目指す靴。薄底、柔軟、ワイドトゥボックス、そしてゼロドロップ。

ゼロドロップは「形状の条件」で、ベアフットは「体験の思想」。この違いを知っていれば、自分に必要なのがどちらか(あるいは両方か)が明確になりますし、移行のステップも見えてきます。

ベアフットシューズに興味があるけどいきなりは怖い、という人は、まずゼロドロップ厚底(Altraなど)で「フラットな角度」に慣れるところから始めるのがおすすめです。その先、もっと地面を感じたくなったら、少しずつソールの薄いシューズにトライするのが良いと思います。

#初心者