ベアフットシューズとは?普通の靴と何が違うのか【実体験で解説
「ベアフットシューズ」という言葉、最近よく見かけませんか。SNSで流れてきた、ジムで隣の人が履いていた、アウトドアショップで勧められた。きっかけは人それぞれだと思います。
ベアフットシューズは、ひとことで言えば「素足に近い感覚で歩ける・走れる靴」です。英語のbarefoot(裸足)が語源です。裸足になるわけではなくて、裸足の状態にできるだけ近い環境を靴の中につくる、という設計思想の靴ですね。
この記事では、普通の靴との違い、なぜ今注目されているのか、そして実際に履き続けている立場からのリアルな体験をまとめています。
ベアフットシューズの5つの特徴
一般的な靴とは、かなり明確に設計が違います。ひとつずつ見ていきます。
ソールが薄い
一般的なランニングシューズのソール(ミッドソール+アウトソール)は25〜35mm程度。厚底カーボンシューズだと40mmを超えます。ベアフットシューズは3〜10mm程度しかありません。地面の凹凸、温度、硬さが足裏にそのまま伝わってきます。
ゼロドロップ(かかとと前足部の高低差がゼロ)
普通のスニーカーやランニングシューズは、かかとが前足部より8〜12mm高くなっています。この高低差を「ドロップ」と呼びます。ベアフットシューズはドロップがゼロ。かかとからつま先まで完全にフラットで、素足で立っている時と同じ足の角度になります。
ワイドトゥボックス(つま先が広い)
一般的な靴は先端に向かって細くなりますよね。見た目はスマートですが、足指が圧迫されて動きにくくなります。ベアフットシューズは足の自然な形に沿ったワイドトゥボックスで、足指が靴の中で自由に広がれるようになっています。
ソールが柔らかい
手でぐにゃりと丸められるほど柔軟です。足裏の筋肉や腱が自然に動いて、足全体がしなやかに屈曲できます。ランニングシューズのようにソールの剛性で推進力を生む設計とは真逆のアプローチですね。
軽い
クッション材、アーチサポート、ヒールカウンターといった構造がほぼないので、驚くほど軽いです。たとえばVivobarefootのPrimus Liteは片足約150g前後。一般的なランニングシューズの半分以下ですね。
普通の靴との違いは「設計思想」
特徴を並べただけだと「薄くて軽い靴」に見えるかもしれません。でも、本質的な違いはスペックではなく、靴をつくる側の考え方にあります。
普通の靴は「足を守る・サポートする」という発想でつくられています。厚いクッションで衝撃を吸収して、アーチサポートで土踏まずを支えて、ヒールの高さで推進力を助ける。足がやるべき仕事を、靴が代わりにやってくれる構造ですね。
ベアフットシューズは「足に仕事をさせる」という発想です。足裏の筋肉、足指のグリップ、アーチの自然なバネ。こういった機能を靴が邪魔しないことを最優先にしています。保護は最低限(石やガラスから足裏を守る程度)で、それ以上は足の力に任せる。
この考え方の違いが、履いた時の体験をまるごと変えてきます。
そもそも靴はどうやって厚底になったのか
少し歴史の話をしておきます。
1970年代、ジョギングブームとともにナイキやアシックスがクッション性の高いランニングシューズを次々に出しました。かかと着地(ヒールストライク)の衝撃を吸収するために、かかと側のクッションはどんどん厚くなっていきます。クッションが厚くなるとかかとで着地しやすくなって、さらにクッションが必要になる、という循環が生まれたわけです。
2000年代にはモーションコントロールやプロネーション補正といった「矯正」の発想が加わって、靴はますますハイテク化しました。そして2020年代、カーボンプレート+超厚底フォームの「スーパーシューズ」が市場を席巻しています。
この流れの中で、2009年に出版された一冊の本が状況を変えました。クリストファー・マクドゥーガルの『BORN TO RUN』です。メキシコの走る民族タラウマラ族が薄いサンダルで超長距離を走る姿を追ったこのノンフィクションは、世界中にベアフットランニングのブームを巻き起こしました。「靴が足を弱くしているのでは?」という問いが、初めて大衆レベルで共有されたタイミングですね。
ブーム自体は2012年頃をピークに落ち着きましたが、考え方は残りました。Vivobarefoot、Xero Shoes、Merrell ベアフットシリーズなど、専門ブランドが地道に製品を磨き続けてきています。
今また注目されている理由
BORN TO RUNから15年以上が経った2025〜2026年、ベアフットシューズが再び注目を集めています。いくつか背景があります。
厚底シューズへの揺り戻し。 カーボンシューズの性能はすごいですが、「靴に走らされている感じがする」「足が弱くなっている気がする」という声はランナーの間で確実に増えています。ゼロドロップの先駆者であるAltraですら、2023年に初の4mmドロップシューズを出して、2026年2月にはExperience 3コレクションとして本格展開を始めました。業界全体が「フラットに近い靴」に向かいつつあります。
ジム・フィットネスでの浸透。 デッドリフトやスクワットなど、地面をしっかり踏む動作ではベアフットシューズの安定性が評価されています。厚底ランニングシューズでウェイトトレーニングをするのは本来不向きですし、ジムでベアフットシューズを履くトレーニーは着実に増えていますね。
実は日本人には馴染み深い感覚
ベアフットシューズは欧米発のコンセプトですが、日本人にとってはどこか懐かしい感覚でもあります。
足袋、草履、わらじ。日本の伝統的な履物はどれもゼロドロップで、足指が自由に動いて、ソールが薄い。ベアフットシューズの条件をほぼ全部満たしているんですよね。日本人は長い歴史の中で、まさにベアフット的な履物で生活して、山を歩いて、走ってきました。
西洋式の靴が一般に普及したのは明治以降のこと。わずか150年ほど前まで、日本人の足は「ベアフット」だったわけです。新しい挑戦であると同時に、ある種の原点回帰でもある。そう考えると、少しハードルが下がりませんか。
実際に履き続けるとどうなるか
導入する際は「徐々に慣らしましょう」の一言で終わりがちですが、実際の移行プロセスはもっと具体的で、もっと泥臭いです。 実際にベアフットシューズを日常的に使っている立場で記事を記載します。
最初の1週間:地面の情報量に圧倒される
初めてベアフットシューズで外を歩くと、まず地面の情報量に驚きます。アスファルトの硬さ、タイルの継ぎ目、砂利の凹凸、マンホールの蓋の温度差。普通の靴では完全にフィルタリングされていた情報が、一気に足裏に流れ込んできます。
足裏には最大20万個もの神経終末があって、体の中でもとくに感覚が鋭い部位です。厚いクッションの靴は、このセンサーにずっとフィルターをかけていたようなものですね。
最初の2〜3週間:ふくらはぎの筋肉痛
ほぼ全員が通る道です。普通の靴ではかかとが持ち上げられているので、ふくらはぎやアキレス腱はやや縮んだ状態で固定されています。ベアフットシューズでフラットに戻すと、これらの部位が伸ばされて、普段使っていなかった筋肉がフル稼働します。
通勤程度の距離でもふくらはぎがパンパンになります。これは正常な適応反応ですが、痛みが強い場合は使用時間を減らしてください。ここで無理をするとアキレス腱炎や足底筋膜炎につながるリスクがあります。
1〜2ヶ月目:歩き方が勝手に変わる
意識して変えようとしなくても、体が勝手に調整を始めます。かかとから「ドスン」と着地する歩き方だと衝撃がダイレクトに伝わるので、足裏全体で着地するか、やや前足部寄りの着地に自然と変わっていきます。歩幅も短くなって、歩行のテンポが上がる感じですね。
3ヶ月以降:普通の靴が「変」に感じ始める
ある時期を境に、たまに普通のスニーカーを履くと違和感を覚えるようになります。かかとが持ち上げられている感覚、足指が窮屈な感覚、地面の情報が遮断されている感覚。かつて「普通」だったものが「不自然」に感じられる。
正直な限界
万能ではありません。真冬のアスファルトは足裏から冷えが直撃しますし、長時間のコンクリート歩行は足裏が疲れます。冠婚葬祭にはもちろん履いていけません。すべてをベアフットシューズに置き換えるのが正解ではなくて、場面によって使い分けるのが現実的な付き合い方です。
代表的なブランドと特徴
日本で手に入る主なベアフットシューズブランドを整理しておきます。
Vivobarefoot(ビボベアフット) はベアフットシューズの代名詞的な存在です。ソール厚は全モデル共通で約6mm。日常履きからトレイルまでラインナップが幅広くて、デザイン性も高いのでスーツにも合わせられるモデルがあります。2024年に東京・原宿に日本初の直営店がオープンしました。
Merrell(メレル)ベアフットシリーズ は、ベイパーグローブやトレイルグローブが代表モデルです。Vibramソールとの共同開発で、アウトドアでのグリップ力が高い。ソール厚約6mmでミッドソールなし。日本での流通量が多いので実店舗で試着しやすいですし、価格も比較的手頃で入門に向いています。
Xero Shoes(ゼロシューズ) はサンダルからスタートしたアメリカのブランドです。5〜10mmの薄いソールとゼロドロップで、「必要最低限の保護」という考え方が最も徹底されています。軽さは群を抜いていて、サンダルモデルは登山やフェスでも人気ですね。
Vibram FiveFingers(ビブラムファイブフィンガーズ) は5本指の形状が特徴的です。見た目のインパクトは強いですが、足指の自由度は最高クラス。ジムトレーニングやフィットネスで使っている人が多いです。ブームの火付け役的な存在ですね。
LEMS(レムス) は日常履きに寄せたデザインが特徴です。ベアフット的な機能を持ちながら、見た目はカジュアルシューズに近い。「ベアフットシューズに見えないベアフットシューズ」が欲しい人に向いています。
用途別の使い分け
ベアフットシューズはランニング専用のイメージがあるかもしれませんが、実際はもっと幅広い場面で使えます。
普段履き・通勤 がもっとも取り入れやすい用途です。日常の歩行距離でベアフットに慣れていくのが、移行の第一歩として最も安全ですね。Vivobarefootの日常履きモデルやLEMSが適しています。
ランニング ではフォアフット/ミッドフット走法への移行を促しますが、いきなりの長距離は厳禁です。まずは1〜2kmのジョグから、週単位で少しずつ距離を伸ばしていきます。Merrell ベイパーグローブやXero Shoesのランニングモデルが定番です。
トレイルランニング・ハイキング では不整地で足裏のセンサーが活きる場面があります。ただし岩場ではソールの薄さが仇になることも。Merrell トレイルグローブやVivobarefoot Primus Trailが人気です。
ジム・ウェイトトレーニング との相性は抜群です。デッドリフト、スクワットなど「地面を踏む」種目では、ソールが薄くフラットなので足裏の感覚がダイレクトで安定感があります。Vibram FiveFingers、Xero Shoesを使っている人が多いですね。
まとめ
ベアフットシューズは、クッションやサポートに頼りすぎた現代の靴とは真逆の発想でつくられた靴です。魔法の靴ではないですし、履いた瞬間にすべてが解決するわけでもありません。
ただ、正しい理解と段階的な移行ができれば、足の感覚が変わって、歩き方が変わって、体との向き合い方そのものが変わっていきます。
大事なのは焦らないこと。移行は週単位・月単位のプロジェクトです。まずは休日の散歩から始めてみてください。足裏が地面の情報を拾い始めた瞬間、「靴を通して地面に触れる」という感覚がちょっと楽しくなりますよ。
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*aruku.tokyo*編集部。複数のベアフットシューズを日常・ランニング・トレイル・ジムで使い分けながら、実体験ベースで情報を発信しています。